動都研究会
あいさつ

仮設首都機能の移転と移動の提案(動都)

 東京一極集中を是正し、地方創生を進め、災害対応の強化を図ることは、日本の将来のために最優先される課題である。

 地方創生の一環として中央省庁や研究の研修機関などの地方移転が検討されているが、現実的には官僚の抵抗により、実現したのは京都への文化庁移転の みで、消費者庁の徳島移転も見送りとなった。このように、地方創生の手段のひとつでもある中央省庁移転には、それを誘導し推進する必然性と起爆剤とし て核となる事業が必要である。

 そこで、その核となる事業として遷都を考えた。しかし、遷都といっても従来の完全に新しい都市を作るものでなく、4〜 5年ごとに全国の地方都市に一部の首都機能を移転じ移動する「仮設首都機能移転(動都)」する構想である。あたかもオリンピックが4年ごとに世界中の都市を移動するよう に、日本中の地方都市が誘致合戦をして、その時代(時期)に適した都市に国会と一部官公庁を移転させる。移転した官公庁で適合するものはそのままその 都市に残り分散させることも可能。オリンピックのように誘致した都市にはインフラが整い、周辺地域までの経済効果を得ることができる。

 従来の遷都と違い、「仮設首都機能移転」は場所の選定が比較的に容易で、費用日正期を大幅に抑えることができ、経済効果も各地に及ぶ。そして新たな インフラ整備は、政府の懸案である「スーパーシティ」構想を実現化することができ、デジタルというインフラが整ったスーパーシティが全国に展開する。


 1990年代に政府内で遷都実現のため具体的な作業が進められたが、候補地間の選定の過程での政治家の権力争いと、バブルの崩壊と共にその議論は消 滅した。しかし東日本大震災後、再び東京一極集中や災害対応面から都市のあり方、つくり方が大きな問題となった。そして今コロナ禍において、仕事のし 方、住み方がどうあるべきか議論されている。結果として現在のIT技術の発展により、都市・会社機能の分散が可能になり、人々は豊かな日常生活と仕事 の両立を望んでいる。それ故に国の中枢たるべき新たな都市づくりには、従来の発想を超えたまったく新しいアイディアが必要である。そのような点から、 東京―極集中、地方創生、災害対応の問題を横断的に解く手法として「仮設首都機能移転と移動(動都)」計画は有効かつ現実的な国家事業となりうると考 える。


 最後に、1936年に建設された現在の国会議事堂は、現状建築基準法の耐震基準にまつたく適つておらず、緊急な耐震補強工事が必要である。そのため に、現状の建物の構造調査をし、歴史的建造物としての意匠を守りながらの補強の設計・施工にはかなりの時間を要する。それ故にその間の仮設国会議事堂 を用意する必要性があり、この仮設国会議事堂を東京外に作る計画には適切なタイミングと考えられる。

   坂 茂  建築家・慶應義塾大学環境情報学部教授

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