研究会の趣旨
首都機能の移転議論は1990年代から引き継がれてきた。1990年に衆参両院が首都機能の移転を決議したことを受 け、1999年になって国会等移転審議会が複数の移転候補地を決めた。しかし、巨額の移転費用等がネックとなり2000年代に入って議論は下火とな る。その後、2014年に政府機関の移転の方針が示され、総務省統計局の一部が和歌山市に移転するものの、計画はしぼみ、本格移転が決まったのは文化 庁の京都移転だけとなっている。
しかし、最近になって東京への諸機能集中が改めて問われる事象が生じてきた。
第一に、新型コロナ感染症の蔓延である。首都圏など大都市を中心としてこの感染症が全国に拡散し、改めて「密集」問題が議論されつつある。
第二に、デジタル化のさらなる進展である。デジタルは立地フリーの性格をもち、テレワークを介した仕事の仕方や居住のあり方を進めるとともに、岩盤 規制といわれてきた「医療」「農業」「教育」における種々の制約をブレイクスルーするきっかけとなる。2021年のデジタル庁の設置により、デジタル 化の推進が社会を大きく変えることが期待されている。
第三に、脱炭素社会への動きである。予想しがたい大災害や温暖化によるさまざまな異常気象が現出している中、世界各国はパリ協定を下敷きにこの方向 に舵を切り、日本も政策の要として「カーボンニュートラル」政策を掲げることとなった。
第四に、災害へのさらなる危惧である。いずれ起こるとされる首都直下型地震に対してさまざまな対策が実施されているが、大災害は想像もつかない規模 で襲ってくる。各種の機能が一極集中する東京の被災は、わが国経済を根底から崩す危険性がある。
さらに防災面から国の中枢を脅かす問題が控えている。1936年に建設された現在の国会議事堂は、現建築基準法の耐震基準や消防法の安全基準に適っ ておらず、緊急な耐震補強工事が必要である。そのため、建物の耐震診断中であるが、歴史的建造物としての意匠を守りながらの補強の設計・施工にはかな りの時間を要する。診断結果にもよるが、その間の国会の機能をいかに保持するかが問われる可能性がある。
このような環境変化の中で、「動都研究会議」を立ち上げることとした。本会議は、上記の状況変化を背景にして、従来の大規模かつハードな首都機能移 転ではなく、フラット化した社会システムの中でソフトかつ分散型のいわば仮設的発想をともなった移転を検討する。全国複数の都市に分散移転すること、 および移転した首都機能が地域と一体となって地方創生に資することが眼目である。定期的な移動を前提とする「持ち回り移転」など弾力的な発想も視野に 入れ、以下の手順を追って「動都」の実現を探る。
第一に、首都機能の一部を東京から動かす、もしくは地方に設置する。新設されるデジタル庁(その支局)、関連する省庁、そして国会が対象となり、そ の機能の遂行にあたってオンラインを含めて関係者が集まるための場所と空間を設置し、そのサポート・システムを構築する。
第二に、移動した首都機能が地域で「デジタル化による地域創生」、「地域単位でのカーボンニュートラルの実現」に資する。前者については、地方商店 街・産業振興、地域農業におけるアグテックの推進等が実現される可能性があり、後者については、資源循環・次世代エネルギー・木質化・既存ストックの 活用を含めた地域単位での低炭素社会に向けた取組みが含まれ、双方が相まって効果を発揮する地域を考える。そのため、この二つの課題解決意欲と実現性 がある地域を移動対象地域とする。
動都が目標とする首都機能の新たな組み換えは、明治維新、第二次大戦の敗戦と断続的になされてきた「国のかたち」のリセットに新たに与するものであ る。
首都機能の移転議論は1990年代から引き継がれてきた。1990年に衆参両院が首都機能の移転を決議したことを受 け、1999年になって国会等移転審議会が複数の移転候補地を決めた。しかし、巨額の移転費用等がネックとなり2000年代に入って議論は下火とな る。その後、2014年に政府機関の移転の方針が示され、総務省統計局の一部が和歌山市に移転するものの、計画はしぼみ、本格移転が決まったのは文化 庁の京都移転だけとなっている。
しかし、最近になって東京への諸機能集中が改めて問われる事象が生じてきた。
第一に、新型コロナ感染症の蔓延である。首都圏など大都市を中心としてこの感染症が全国に拡散し、改めて「密集」問題が議論されつつある。
第二に、デジタル化のさらなる進展である。デジタルは立地フリーの性格をもち、テレワークを介した仕事の仕方や居住のあり方を進めるとともに、岩盤 規制といわれてきた「医療」「農業」「教育」における種々の制約をブレイクスルーするきっかけとなる。2021年のデジタル庁の設置により、デジタル 化の推進が社会を大きく変えることが期待されている。
第三に、脱炭素社会への動きである。予想しがたい大災害や温暖化によるさまざまな異常気象が現出している中、世界各国はパリ協定を下敷きにこの方向 に舵を切り、日本も政策の要として「カーボンニュートラル」政策を掲げることとなった。
第四に、災害へのさらなる危惧である。いずれ起こるとされる首都直下型地震に対してさまざまな対策が実施されているが、大災害は想像もつかない規模 で襲ってくる。各種の機能が一極集中する東京の被災は、わが国経済を根底から崩す危険性がある。
さらに防災面から国の中枢を脅かす問題が控えている。1936年に建設された現在の国会議事堂は、現建築基準法の耐震基準や消防法の安全基準に適っ ておらず、緊急な耐震補強工事が必要である。そのため、建物の耐震診断中であるが、歴史的建造物としての意匠を守りながらの補強の設計・施工にはかな りの時間を要する。診断結果にもよるが、その間の国会の機能をいかに保持するかが問われる可能性がある。
このような環境変化の中で、「動都研究会議」を立ち上げることとした。本会議は、上記の状況変化を背景にして、従来の大規模かつハードな首都機能移 転ではなく、フラット化した社会システムの中でソフトかつ分散型のいわば仮設的発想をともなった移転を検討する。全国複数の都市に分散移転すること、 および移転した首都機能が地域と一体となって地方創生に資することが眼目である。定期的な移動を前提とする「持ち回り移転」など弾力的な発想も視野に 入れ、以下の手順を追って「動都」の実現を探る。
第一に、首都機能の一部を東京から動かす、もしくは地方に設置する。新設されるデジタル庁(その支局)、関連する省庁、そして国会が対象となり、そ の機能の遂行にあたってオンラインを含めて関係者が集まるための場所と空間を設置し、そのサポート・システムを構築する。
第二に、移動した首都機能が地域で「デジタル化による地域創生」、「地域単位でのカーボンニュートラルの実現」に資する。前者については、地方商店 街・産業振興、地域農業におけるアグテックの推進等が実現される可能性があり、後者については、資源循環・次世代エネルギー・木質化・既存ストックの 活用を含めた地域単位での低炭素社会に向けた取組みが含まれ、双方が相まって効果を発揮する地域を考える。そのため、この二つの課題解決意欲と実現性 がある地域を移動対象地域とする。
動都が目標とする首都機能の新たな組み換えは、明治維新、第二次大戦の敗戦と断続的になされてきた「国のかたち」のリセットに新たに与するものであ る。