第2回研究会(2003.1「都心居住の実態等について」(関連資料による討論)。

○ 世帯人口は平成712年に急速に少人数化している。単身又は夫婦のみの高齢世帯が増え、高齢者の居住問題が深刻化している。こうした方々が都心居住の予備軍に。

○ 大都市における都市構造の変化として、企業の社宅用地等の大量放出や、都心の小規模事務所の空家率がアップし住宅への転換が図られつつあること、都・区によるマンション用定借土地提供等都心居住政策が出始めたこと、都心居住の便利さの見直しなどなどが挙げられる。この背景には、地価と住宅建設費の低下、少子化による資産効果などの経済的理由とともに、世帯の高齢化(郊外居住の苦痛)、世帯規模の縮小など人口特性による理由や、都心の魅力向上、都市コミュニティの復活など社会的な理由がある。

○ 一方、地方都市においても中心市街地の空洞化が進行しているが、都市の規模と中心市街地生成・発展過程とからんで都心居住の問題が多様化しつつある。中心市街地人口の推移では、都心への人口回帰の傾向が読み取れ、都心への人口回帰現象は程度の差こそあれ、ほぼ全国的な傾向といえる。しかし、都心回帰は医療、介護、身の回り品買い物、その他日常の生活利便施設の不足など、都市により様々な問題を惹起している。これは何十年もの間、生活関連施設を郊外に移してきた都市政策の責任でもある。

○ 国、及び地方公共団体が協力して都心居住のための体制作りとともに、まちづくりと一体となった良好で多様な住宅を供給していくことが重要。中心市街地を形成するための関連公共施設整備、基盤整備の促進も必要。また、都心居住の望ましい形態とそれに向けた政策誘導という観点から都市政策の再検討が必要である。

○ 中心市街地人口は、ここ10年ほどで減少から増加へと大きく転換している。例外的に減り続けている都市は、商業中心の中心市街地活性化策により、生活利便施設を徹底的に郊外に転出させてしまったところである。

○ 地方では平成5年あたりまで公共事業に支えられていた。公共事業がはずされた後、医療、介護、教育などのサービス産業が拡大し、雇用を下支えしている状況にある。

○ 都心に住宅をつくり過ぎ、学校をはじめとする利便施設が足りなくなった都市もある。やはり計画論が不可欠であり、戸数を稼ぐだけの都心住宅では意味がない。

○ 交通弱者となる高齢者が都心に住むためには、都心の中で生活を完結させることが必要。そのためには都市問題全般を根っこから考えていかなければならない。

○ 郊外の居住者は高齢で車が利用できなくなると都心に戻りたがる傾向があるが、皆が転出したがるために資産価値が下落し、都心への住み替えが難しくなっている例もある。市が高齢者施設を都心に集中させようとしても高齢者は移ってこられない。

○ 相続税制も重要。戸建庭付きは相続に有利。ミニ開発よくないと言われながら、税制メリットからそちらが売れるということになる。売却もしやすい。欧州のようにアパートの中庭に人が入れるような街の作り方が日本の土地所有制度や税制上できるか。

○ 都心居住では、交通、居住、社会政策、税制等をトータルに組み合わせないとモデルにならない。そうした新しい都市構造モデルを提示する意義は大きい。   戻る