7回研究会(2004.1)「金沢市における都心居住の現状について」

(講師:金沢市都市整備部定住促進局住宅政策課 担当課長補佐 山田哲也様)

(要旨)

1.金沢市における都心居住の現状

金沢市は、江戸時代には、江戸、大阪、京都に次ぐ4番目の都市であった。人口は明治維新以降伸び悩んだが、高度成長期以降増加に転じ、現在約45万人。金沢の街は戦災に遭わずに歴史的景観が残されているといういい側面が残されている反面、道が狭い、現在の生活様式に合わない部分があるため、街なかから郊外や、市外に流出する傾向が強まり、中心市街地の商業の停滞も見られたため、平成10年に中心市街地活性化基本計画を策定し、市の中心部890ha(人口約7万人)を「まちなか」と定め、定住促進等に取り組みはじめた。

 

2.都心居住関連施策の内容

中心市街地活性化基本計画のなかの柱である「まちなか定住促進事業」では、まちなか住宅建築奨励金、まちなか共同住宅建設費補助、特定優良賃貸住宅建設費補助、高齢者向け優良賃貸住宅建設費補助、まちなか住宅団地整備費補助、まちなか住宅リフレッシュ支援、まちなか定期借地権設定補助等の制度を用意している。これら制度の利用状況は、まちなか住宅建築奨励金では、平成10〜15年度までの申請件数は300件強に達しているが、特定優良賃貸住宅建設費補助など利用件数が低いものもある。
 また、中心部のオフィスの空室率は10%を超えていることから、これらを住宅として有効活用するために、住宅転用に対する助成制度も設けているが、これについては、利用実績はまだない。

 なお、こうした事業により、まちなか定住に対して公金を投入することの位置づけを明確にするため、平成13年に「金沢市まちなかにおける定住の促進に関する条例」を制定している。条例ではまちなかにおける定住促進に係る市の責務を定めるとともに、住民への協力義務を定めている。また、5年を目処に補助施策の再評価を行うこととしている。また、平成14年には、まちなかにおける駐車場や空地等の低未利用地の調査を行い、さらに、その所有者にアンケートを実施し、住宅開発の可能性などを調査している。

 

3.課題と展望

まちなかにおける人口推移をみると、こうした施策の推進にもかかわらず、減少傾向が続いており、施策の効果がはっきり見えていない状況にある。しかし、こうした施策がなければ都心部の人口は更に大幅に減少していたものとみられる。
 施策を推進している立場から、都心部に住みたいという層は増えている、特に熟年層に多いと感じている。郊外の特に丘陵部の戸建住宅に住んでいる方が、坂の上り下りや雪かきが大変といった理由から都心部のマンションに移られるといったケースは今後も増えるものとみられる。また、働き盛り夫婦層等の居住ニーズも高く、こうした施策を今後もきめ細かく実施していく予定である。

以上

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