社会資本整備状況の概略


(財)都市化研究公室 研究員 岩間真二


 目次と更新情報

■目次
■更新情報



 はじめに

 本稿は、社会資本の整備の在り方を議論する前に、その参考として、現状で社会資本のストックの状況がどうであるのか、またそのストックは戦後どのように推移してきたのかを概観することによって、その基本的な知見を整理するものである。


 資料について

■社会資本ストック
 社会資本ストックの状況に関しては、主に内閣府政策統括官編集の「日本の社会資本2007」のデータを用いている。今後、行政の投資の状況をみるために、総務省自治行政局地域振興課「行政投資実績<都道府県行政投資実績報告書>」などのデータも用いる予定である。
 日本の社会資本2007では、1955年から2000年までに5年ごとと2003年の推計を出している。人口は住民基本台帳ベースで算出している。なお、この価格は2000年暦年価格となっている。

 ※なお、沖縄は1975年より集計しており、単純に合計しているためその前後での数値の読み方に注意する必要がある。

■地域区分と分野
 地域区分に関しては、暫定的に全国を下記のような区分をしている。なお今後の研究会での検討では、より地域の社会的つながりを考慮した地域区分を用いる場合もある。
地域名 都道府県名
北海道 北海道
東北 青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島
関東 茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川
北陸 新潟・富山・石川・福井
中部 山梨・長野・岐阜・静岡・愛知
近畿 三重・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山
中国 鳥取・島根・岡山・広島・山口
四国 徳島・香川・愛媛・高知
九州・沖縄 福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄

 分野に関しては、日本の社会資本では14分野15区分であるが、これを行政投資実績における大分野別に区分する。行政当時実績における区分は以下のとおりである。
生活基盤投資 市町村道、街路、都市計画、住宅、環境衛生、福利厚生(病院、介護サービス、国民健康保険、老人保健医療、介護保険、公立大学付属病院の各事業を含む)文教施設、水道及び下水道の各投資
産業基盤投資 国県道、港湾(港湾整備事業を含む)、空港及び工業用水の各投資
農林水産投資 農林水産業関係の投資
国土保全投資 治山治水及び海岸保全の投資
その他投資 失業対策、災害復旧、官庁営繕、鉄道、地下鉄、電気、ガス等の上記以外の各投資

 そして、これを14分野15区分に合わせて以下のように集計している。
生活基盤資本 公共賃貸住宅・下水道・廃棄物処理・水道・都市公園・文教
産業基盤資本 道路・港湾・航空・工業用水道
農業水産資本 農業・漁業
国土保全資本 治水・治山・海岸


 分野別社会資本ストックの状況

 分野別の社会資本ストックの状況は以下のようになっている。


 金額としては1970年ごろから急激に増加していることが分かる。分野別の社会資本に対するシェアは以下のとおりとなっている。
1955年 1960年 1965年 1970年 1975年 1980年 1985年 1990年 1995年 2000年 2003年
生活基盤資本 61.7% 56.9% 52.9% 51.3% 52.3% 54.1% 54.8% 54.2% 53.2% 52.7% 52.7%
産業基盤資本 11.6% 12.5% 14.9% 17.2% 19.2% 20.1% 21.1% 21.5% 22.1% 22.7% 23.2%
農業水産資本 7.4% 11.4% 15.0% 16.8% 15.8% 15.1% 14.1% 14.1% 14.6% 14.9% 14.4%
国土保全資本 19.2% 19.2% 17.1% 14.7% 12.6% 10.7% 10.0% 10.3% 10.0% 9.8% 9.6%

全体的には生活基盤と国土保全資本のシェアがやや減少しており、産業基盤および農業水産が増加している。生活基盤資本は1955年以降シェアが減少していき、1970年からやや持ち直し、その後大きなシェア変動はない。
 産業基盤は、1980年にかけてシェアが増加しておりその後緩やかな増加となっている。農業水産は1965年にかけて一気にシェアを伸ばしその後緩やかに減少している。国土保全は、一貫してシェアを落としている。
 このあたりを分析するために、前期比の増加率の状況を見てみる。


増加率は、1970年から1980年にピークを打ちその後増加率が減少していく推移をとるが、分野別にみると、生活基盤は1985年とやや遅いピークである、産業基盤は1970年に増加率のピークがあり、その増加率も高い。農業水産は1965年に増加率のピークがあり他の基盤よりピークの位置が早い。国土保全は1975年にピークがあるが全体的にはその増加率は低くなっている。
 つづいて、全体の増加率を基準としてとしてその差をとってみると以下のようになる。


これは、おおよそ、どの分野にへの投資が重点的に配分されたのかをみる事が出来る。生活基盤は1975年から1985年にかけて全体の平均と比較してやや多く増加している。これはこの時期の第2次ベビーブームや、都市化の進行によってその需要にこたえるために多めの割合で投資されたと推測できる。
 産業基盤資本は、全体と比較して常に多めの資本投下されており、その中でも1960年代後半から70年代にかけて多く投下されている。農業水産は、初期には多く投下されその後、全体と比較して少ない増加になっている。これらのことは、農林水産業から工業への産業転換とその需要にこたえるために、社会資本が投下されたと推測できる。
 国土保全資本に関しては全体的に、投入割合が少ない。また、全体的には後年になるほど既存ストックが大きくなるため、その増加率は低くなる傾向がある。



 地域別社会資本ストックの状況

 地域別の社会資本ストックの状況は以下のようになっている。


それぞれ全国に占める割合は以下のようになっている。
1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2003
北海道 7.0% 7.6% 7.8% 7.9% 7.8% 7.9% 8.1% 8.1% 7.9% 8.0% 8.0%
東北 10.6% 10.3% 9.6% 9.2% 9.2% 9.7% 9.9% 9.9% 9.8% 9.9% 9.9%
関東 20.0% 20.4% 22.9% 23.9% 24.0% 23.3% 22.9% 23.2% 23.5% 22.9% 22.7%
北陸 6.5% 6.4% 6.5% 6.6% 6.6% 6.8% 6.8% 6.6% 6.5% 6.5% 6.5%
中部 12.5% 12.9% 12.9% 13.1% 12.6% 12.2% 12.0% 11.9% 12.0% 12.1% 12.2%
近畿 17.2% 17.3% 17.8% 18.0% 17.9% 16.8% 16.2% 15.8% 15.7% 15.6% 15.6%
中国 8.8% 8.3% 7.3% 6.7% 6.8% 7.1% 7.4% 7.5% 7.5% 7.5% 7.5%
四国 5.3% 5.0% 4.4% 4.2% 4.1% 4.2% 4.4% 4.4% 4.5% 4.6% 4.6%
九州・沖縄 12.1% 11.7% 10.8% 10.5% 11.1% 12.0% 12.4% 12.6% 12.6% 12.9% 12.9%

 シェア的には大きな変化はないが、関東及び中部、近畿は1970年代にやや増加したのち徐々に減少している。一方、九州沖縄、中国はその逆の傾向を示している。

 続いて、地域別社会資本ストックの増加であるが、全体的には1960年代後半から、1970年代後半までに大きく増加しその後、増加割合が徐々に減少していることが分かる。


 その増加は、関東が1965年がピークであり、近畿、中部、北海道北陸が1970年がピーク、その他の地方が1975年が増加率のピークとなっている。

 さらにその増加の全国平均との差を見たのが以下となっている。


 関東における増加が全国平均をう和舞っているのが1960-1975年の間であるのに対し、九州・沖縄では1975年以降となっており、地域によりその差が明らかになっている。1980年以降は主に関東・中部・近畿における増加が全国平均を下回る状況が続き、その他の地方は増加が高くなっている。




以下、今後随時追加していく予定です。


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